地球が静止する日

ネタバレあり。


ジャイアントロボじゃなくて、キアヌ・リーブスの【地球が静止する日】を見てきた。ゲバラと怪人20面相を置いてこっちを観たのは、宇宙英雄物語(伊東岳彦)の元ネタの一つだからだ。

宇宙英雄物語 1 ディレクターズカット (ホーム社漫画文庫)

宇宙英雄物語 1 ディレクターズカット (ホーム社漫画文庫)

セントラルパークに降りてきた輝く球体から、地球人そっくりのクラートゥと護衛ロボットのゴートが、地球を救うために現れる。
彼らが来た理由は『地球人を審判して、地球の害なら人類を絶滅させる』という……つまるところ手塚治虫のW3(1965年)のハリウッド版だ(W3は地球ごとぶっ壊すつもりだったが)。
ただし、映画のオリジナル(1951年)では友好的宇宙人らしい。
地球の静止する日 - Wikipedia
で、まぁ。
ラストは『危機に直面した時こそ地球人が変われると信じて、クラトゥは地球上の全エネルギーを(腕時計の乾電池まで)消し去ってしまう』という結末だった。
はずなんだが、その肝心な地球静止は大きく扱われず、単に『地球破壊兵器ゴートを止めてクラトゥは宇宙に帰った』にしか見えん。
物語のカタルシス‥‥カタストロフかもしれんが、真っ暗な地球とか出して欲しかった。せめてニューヨークくらい塵にして終われよ。
そして気が付いた。宇宙英雄物語のラストは、「地球の静止する日」のオマージュだったんだな。

魔法溢れる真太陽系。しかし魔法とは「占王星」と呼ばれてきた人工生命体クラートゥの夢物語の具現化した産物でしかなかった
いまやクラートゥは目覚め、魔法船も空中城も魔力を失う
無慈悲な物理法則による大崩壊の中、敵の魔術師ゾハルは、パートナー紅竜に叫ぶ
「この宇宙が全て夢物語なら、私の愛も消えてしまうの?」

世界と自分が変わってしまう絶望と恐怖。当時は角川騒動で不完全燃焼だったけど、改めて読むといいラストだよ。SF漫画で換骨奪胎と言えば万華鏡→009だけど、地球静止→宇宙英雄も本当によく出来てる。

漫画に有って今回の映画に無かったもの。それは【地球が静止した絶望】。
チェンジ!チェンジ!って世界風潮みたいだけど、政権じゃない映画では、無責任にハッキリ言ったほうが良かったんじゃないか?
「仮に世界がチェンジしたとしても、人間はバタバタ間引かれるよ。お前も俺も」って。
回りくどくて暗い展開やバッドエンドは嫌いだ。だけど、人類不要論を振りかざした映画なんだから、お気楽な【嵐は去った】エンドじゃなくて、それくらい苦い〆のほうが良かった。


あと細かいバカ話。
冒頭の手の甲を火傷した登山者は中盤の中国人なのか?
ゴートを全身タイツザク地球人型にした宇宙人は、デザインセンスが無いなあ。身長3mの理想的な男性のボディなんて、気持ち悪さと威圧感しかないわ。
「礼節も知らない無能が主人公を窮地に」という展開、よくある話だが、漫画でもドラマでもこういう話が一番苦手だ。
ドラゴンボールの予告が明らかにおかしい。客が俺独りなら大爆笑してた。でもそろそろ『大爆発で同心円状に都市崩壊』は…メガロフォビアなんで、ああいうのは苦手だ。