「ここは酒屋の向かいの店かね?」

玄関を見ると、戸を半分あけて首だけ入れている痩せぎすのバアサンが。聞き返すともう一度同じ口調で質問する。面識もなく用件もわからない。
「たしかに、うちの向かいは酒屋ですが」
「トウはあるか?」
トウって何?
2・3のやり取りの後、彫刻刀を欲しいことが判った。刃物屋はお隣です、と答えたらぴしゃりと戸を閉めて隣家に入っていった。
……突っ込むところは幾つもあるが、最初のアレはわざわざ酒屋の向かいの店に来てする質問ではない。