卒業(斉藤由貴 1985)


制服の胸のボタンを 下級生たちにねだられ
頭をかきながら逃げるのね ほんとは嬉しいくせして
ひとけない午後の教室で 机にイニシャル彫るあなた
やめて思い出を刻むのは 心だけにしてとつぶやいた

離れても電話するよと 小指差し出して言うけど
守れそうに無い約束は しないほうがいい ごめんね
セーラーの薄いスカーフで 止まった時間を結びたい
だけど東京で変わってく あなたの未来はしばれない

ああ 卒業式で泣かないと
冷たい人と言われそう
でも もっと哀しい瞬間に
涙はとっておきたいの

席順が変わりあなたの 隣の娘にさえ妬いたわ
いたずらに髪をひっぱられ 怒ってる裏ではしゃいだ
駅までの遠いみちのりを はじめて黙ってあるいたね
反対のホームに立つ二人 時の電車がいま引き裂いた

ああ 卒業しても友達ね
それは嘘ではないけれど
でも 過ぎる季節に流されて
逢えないことも知っている